シロツメクサの約束~恋の予感噛みしめて~
「むしろなんでわかったの……私そんなに顔変わってない?」

 たしかに童顔だってよく言われる。幼稚園の教諭としては子どもたちに親しみやすさを与えるからいいことだと思うようにしているけれど。

「かわってない。昔と変わらず可愛い」

「か、かわいいって……」

 言われ慣れていないから、間にうけてしまう。心臓がうるさく鳴っている。はずかしくて顔を伏せていると、信号で止まっている間彼が私の顔を覗き込んできた。

 その顔は面白そうに笑っていた。

「からかったの?」

 昔もちょっとした意地悪をしてくることがあった。思い出して思わず頬を膨らませる。

「俺が奈穂をからかうわけないだろう」

「うそつき、昔はよくからかってたじゃない。あ、今日だって泣き虫奈穂って」

「そうだったっけな?」

 とぼけた様子の彼が青信号で車を発進させる。

「もう、すぐそういう態度をとるんだから」

 ふてくされた私をなだめるように、彼が伸ばした手でポンポンと私の頭をなでるように叩いた。

 ふたりして顔を見合わせてどちらからともなく笑い出した。

 それもまた昔と同じだ。

 なつかしさと共に、くすぐったい恥ずかしさが交じり合う。彼と再会してすぐなのに芽生えた気持ちが私をそうさせるのだ。

 ふと視線を窓の外に移すと、すでに家の近くまできていた。

 他愛のないおしゃべりが楽しくて、気がつかなかったのだ。

 朝陽くんが家の少し手前で車を停めた。

「ここでいいか?」

「うん、ありがとう。なんだかあっという間だったな」
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