シロツメクサの約束~恋の予感噛みしめて~
 念を押すように顔を覗き込んでくる。その目がキラキラ輝いていて可愛い。

 きっと結婚がなんだかよく理解していない。好きな人とずっと一緒にいられるくらいにしか思っていないだろう。

 こんなふうに慕われて、私は〝先生〟をしていて本当によかったなと思う。

 きっと空くんはすぐに私のことも忘れてしまって、大人になったら素敵な女性と結婚するんだろうな。

「大人になったら、また考えてみてね」

「うん、わかった」

 大きくうなずいた空くんの頭をなでる。

「こら、空。生意気なこというんじゃないの!」

 後ろで聞いていたのか、お母さんが「すみません」と頭を下げた。

「いいえ、あまりにもストレートなプロポーズに思わず胸がキュンとしました」

 私の言葉にお母さんは笑っていた。

 朝陽くんが受付カウンターから出てきた。

「来週また見せにきてください」

「はい。本当にお世話になりました」

 朝陽くんが空くんの前にかがんで目を合わせる。

「本当によくがんばったな。かっこよかった」

 朝陽くんの言葉に空くんも得意げな顔をしていた。

 治療を終えた空くんは、赤ちゃんを抱っこしたお母さんに手を引かれて帰っていく。ガラスの自動ドアの扉を抜けた先でもう一度こちらを振り向いて、手を振って元気に帰っていった。

 私と朝陽くんはそれに答えるようにして一緒に手を振り返した。

「さてと」

 空くんたちの姿が見えなくなると、彼が私の方を見た。

「本当に助かった。子どもは苦手じゃないんだが、ああ泣かれるとどうしていいかわからない」

 ほとほと困ったという顔をしている。

「奈穂は立派な先生だな。感心した」
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