シロツメクサの約束~恋の予感噛みしめて~
 苦手な食べ物がないと告げると「昔はニンジンたべられなかったのにな」といいながら、彼がおすすめの料理を注文した。

 私は朝陽くんだってしいたけ嫌いだったじゃないの、と心の中で思ったけれどここでは口に出さないでおく。

 彼がメインで頼んでくれたのは、中華がゆだった。きっと歯に負担がかからないものを選んでくれたのだろう。

 粥の上にはワンタンの皮を素揚げしたものとザーサイというシンプルなものだったのだが、これが本当においしかった。

 そのほかにも芝えびと青菜の塩炒めや、ワンタンなどもテーブルの上に並ぶ。

 お皿に取り分けようと手を伸ばした私の手を、彼が止める。代わりに彼があれこれ私に世話をやいた。それも昔と変わらない。

「昔もそうやって、朝陽くんが私のお世話をやいてくれていたの思い出しちゃった」

「本当は自分でやらせた方がいいだろうけど、俺がやりたかったんだ。今も昔もそれはかわらない」

「相変わらずのお兄ちゃん体質だよね」

 彼が差し出した皿を受け取りながらそういうと、軽く睨まれた。

「俺は、今も昔も奈穂のお兄ちゃんのつもりなんて、まったくなかったけどな」

 不満げに軽く目を細めて私のことを睨んできた。

「う……こんな妹なんていらないよね」

 昔から怖がりだし、不器用だし、面倒ことこの上ない。手のかかる妹はお荷物に違ないだろう。

「そういう意味じゃないけど、まあいい。ほら、これも食べて」

 彼が追加で私のお皿に大きな海老を乗せた。

 それからお互いのことを順番に話した。会わなくなってからずいぶん経つ。その時間をうめるように、私たちはあれこれと尽きぬまま話を続ける。
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