シロツメクサの約束~恋の予感噛みしめて~
 今の私が彼の目に少しでも好ましく映っているなら、うれしくて飛び跳ねそうだ。

「そんな奈穂にもう一度聞くけど、あの日の約束本気で叶えて欲しいって言ったら迷惑か?」

「え、叶えるって『結婚してあげる』って話?」

 冗談にしてもほどがある。

 何を言いだしたのかと、笑いながら彼の顔を見る。

 どうせまた、私のことをからかうつもりなんだろうな。なんて思っていたのだけれど、予想とは違う表情の彼がそこにいて私の心臓がドキッとはねた。

「な、何どうかしたの?」

「どうかしたのじゃない、あの約束を叶えるつもりは奈穂にあるのか?」

 まっすぐに私を射抜くような彼の真剣な視線。これは冗談でもなんでもく、真面目に彼が私に答えを求めているのだ。

「そんな私……だって、急に」

 意味のない言葉ばかりが口から出てくる。しかし急な展開に気が動転してしまっているのだから許して欲しい。

 目をあちこちに泳がせて、必死になって自分の中の答えを探す。ちゃんと考えたいのに、朝陽くんはその時間さえも奪っていく。

「奈穂は今の俺は嫌い?」

「ううん、絶対それはない」

 これははっきりと言いきれる。再会してまだ一週間だが、自分の中になつかしさや甘酸っぱい初恋とは違う気持ちがあるのは確かだ。

 しかしすぐにそれが大人の恋と呼べるものになるのだろうか。恋愛に疎い自分がすぐに答えを出せるわけなどなかった。

「ごめん、すぐには答えは出せないよな。せかして悪かった」

「朝陽くん……あの、本当に誤解しないで欲しいの、私」

「わかったから、そんなに慌てるな。奈穂だけじゃなくて、俺と一緒に答えを探そうか」
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