シロツメクサの約束~恋の予感噛みしめて~
 私の体が固まっているのを見て、彼が様子を窺う。私は目で平気だと訴えるとまた治療を再開させた。

 怖いと痛い、でも治したい。こんな気持ちの間をいったりきたりしている。

 麻酔が効いていても、わずかに残る感覚から彼の手際が良いことがわかる。そして時折私の様子を窺うのも忘れない。

 どのくらい時間が経ったのか、緊張していてよくわからないが。彼が前かがみだった彼が体を起こしたのが雰囲気でわかった。

 そしてすぐに「おつかれさまでした」と聞こえた。

「え、もう終わった?」

 もっと時間がかかるのも痛いのも覚悟していたのに、思っていたよりもあっけなく治療は終了する。

「あぁ、そこでうがいして」

 背もたれが起こされて言われたとおりに、紙コップに注がれた水で口をゆすぐ。

「早いし、思ったよりも痛くなかった」

「それはよかった。今は麻酔が効いてるからな。痛み止めを出すから痛いようなら飲んで」

「はい、先生」

「なんだよ、急に。奈穂に先生なんて呼ばれたら、変な感じがする。今日の治療について説明する。わからないところがあったら、遠慮なく聞いて」

「うん」

 少し照れたような彼は、話題を変えるべく手元のパソコンを操作し始めた。

 彼は診察椅子の前のモニターに、今日の施術についてわかりやすく説明してくれた。

「痛みがなければ、次は一週間後。問題がなければ、そこで治療は終わり」

「え、もっと通わないといけないかと思った」

「何度もってなると、治療に来ない人もいるから。ほら、誰かさんみたいに痛くないと来ないって人」

 暗に私のことを言われているとわかり、ぐうの音も出ない。

「うう……申し訳ありません」
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