シロツメクサの約束~恋の予感噛みしめて~
「これを機会に、定期健診をおすすめします」

「……はい」

 小さいころから、歯が弱い自覚はあったのに放っておいたつけが今になってきた。

「さて、営業もして新しい顧客も確保できたことだし、今日はこれでおしまいだな」

「ありがとう、朝陽くん」

「どういたしまして、泣き虫奈穂ちゃん」

「もう、今日は泣いてないじゃない。朝陽くん上手だったから泣く暇もなかった」

 正直最初は痛みと恐怖で泣きそうだった。しかし彼の丁寧な施術で泣かずに済んだのだ。

彼は医療用の手袋を外しながら、パソコンをいじっている。

「来週、夕方は予約で埋まっているんだけど、今日と同じ時間でいいなら診るけど」

「いいの? 時間外でしょ」

「あぁ、だけど今日みたいに俺だけで対応することになる」

「私は、全然それで。むしろうれしい」

 いくら幼馴染と言えど、スタッフの前であまりなれなれしくするもの気が引ける。

「わかった。じゃあ、同じ時間に来て。あと、少しでも様子がおかしかったら仕事を休んででもすぐに診せにきて」

「ハイ。先生」

「いい子だな」

 彼が私の頭をガシガシと撫でた。彼にとっては昔にもどったような感覚だっただろうけれど、私は自分の鼓動があり得ないほど早く脈打っているのを感じていた。
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