私がこの世で一番大好きな人

「あれ、ベッドから抜け出してる」

「結構な怪我してるはずなのに、よく動けたね」


 金髪の人と茶髪の人が口々に言う。
 黒髪の人が近づいてきて、彼の傷の具合を見ている。


「これなら治せそうだ」

「本当ですか?」

「うん、こんな傷すぐ治すからね」


 ベッドに寄りかかっている状態の私の頭をその人は優しく撫でてくる。

 その手つきはどこか彼と似ていた。
 私から手を離すと、彼の包帯を外して傷の上に手をかざす。

 それを黙って見ていると、金髪の人が私を持ち上げようとするので抵抗する。


「そんなにリュカと離れたくないの?」


 私はそれに無言で頷く。
 金髪の人は困ったように笑う。


「この子がそうしたいなら、近くにいさせてあげよう」


 茶髪の人が気づいたら側にいて、私の頭を撫でて優しく言う。

 どうして皆こんなに頭を撫でてくるのだろう。
 もしかして外の人達は皆頭を撫でるのが好きなのだろうか。

 そう思いながら、その人に撫でられたまま彼を見る。

 しばらくすると苦しそうに歪められていた顔も安らかになっていく。
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