私がこの世で一番大好きな人
 そのまま歩き出そうとするので、彼から離れたくなくてまた抵抗する。


「やめてください。離して」


 そう言うと、その人は手を離してくれる。


「嫌がられてるじゃないか」

「うるさいな」


 金髪の人がからかっているのを、茶髪の人はあしらっている。
 そして私に向き直り、優しく微笑みかけてくる。


「いきなり連れて行こうとしてごめんね。体を綺麗にした方がいいかと思って」

「別に私はいいです」

「でもリュカの目が覚めた時に、君からいい匂いがしたら、こいつ喜ぶと思うんだよね」


 私からいい匂いがしたら彼が喜ぶ。

 彼が喜んでくれるなら体を綺麗にしようと、私は大人しく茶髪の人について行くことにする。


「ちゃんとリュカのこと見ていてくださいね」


 金髪の人と黒髪の人に言ってから部屋を出る。

 連れてこられた部屋には女の人がいた。
 「あとはよろしくね」と言って茶髪の人が部屋から出て行ってしまう。

 知らない人と二人きりなことに不安になる。
 私が扉の前で固まっていると、女の人が優しく笑いかけてくる。


「私はキャロル・アディソン。あなたはリーベであってるかしら?」


 私は無言で頷く。
 「近づいてもいい?」と言う彼女に警戒しながらまた頷く。


「それじゃあ、綺麗にしましょうね」
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