私がこの世で一番大好きな人

「だからお二人さーん、俺の存在忘れないでくださーい」


 彼から好きと言われたことが嬉しくて、イアンさんがいることをすっかり忘れてた。

 手を繋いでいるのも恥ずかしくなり、彼から距離をとる。


「お前のせいで、リーベが離れたじゃないか」

「俺のせいか? そうだ、この子が初めて外に出た時の姿、お前にも見せてやりたかったな」


 私は何かおかしなことでもしていただろうか。
 思い出してみるけど、初めての外の世界に浮かれていたことか、彼のことを心配していた記憶しかない。


「どんなだったんだ?」

「見るもの全て新鮮だったんだろうな。目すごいキラキラさせてて、本当に可愛かったよ」

「くそ、あいつに斬られなければ、俺もその姿見れたのに。絶対すごい可愛かったに決まってる」


 彼がすごく悔しそうにしてる。

 そんなに悔しがること?
 彼のことを一瞬でも忘れて、外の景色に見惚れていたのは私的には結構な汚点なのに。
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