私がこの世で一番大好きな人
 扉の開く音で目が覚める。

 しまった。
 オリバーが来るまでには起きていないと駄目なのに。

 どうしようと顔を青くしていると、入ってきたのはオリバーではなく、先程オリバーの隣にいた男だった。

 どうしてこの男がここに?
 もしかしてこの男も私のことを殴りに来たの?


「そんなに怖がらないで」


 オリバーとは違う優しい声が聞こえる。
 それでも怖くてその場で震えていると、男が私に向かって手を伸ばしてくる。
 殴られるのだと思い、身構えていると頭を優しく撫でられる。

 こんな風に撫でられるなんてはじめて。

 驚いてその男を見る。


「さっきはごめんね。オリバーに合わせるしかなかったけど、君のこと怖がらせたよね。俺はリュカ・ブラウン。君はリーベだったよね」


 リュカと名乗る男は綺麗な黒髪ををしていた。
 私の手入れされていない髪とは大違いだ。
 髪と同じように黒い瞳は優し気にこちらを見ていた。

 身長はオリバーより少し大きいように感じる。
 しかしオリバーと違い、鍛えているのか細身ながらもしっかりとしている。


「そう、ですけど、私に何か用ですか?」

「君を助けたいんだ」

「そんなこと言って、私が逃げ出そうとしたら、あの人と一緒に殴るんでしょう?」

「そんなことしないよ。余程酷い目にあってきたんだね。少し時間はかかるだろうけど、絶対に君をここから助け出してみせる」


 そんなことを言われても、オリバーが連れてきた男のことなど信用できない。

 私は彼から視線を逸らす。
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