私がこの世で一番大好きな人
 私の血で所々赤く染まっている、本来なら白かったワンピースの上からお腹を軽く押される。


「い゛……」

「ごめん、痛いよね。今その怪我を治すから、少しだけ我慢してて」


 男が私のお腹の上に手をかざし、治癒魔法をかけてくる。

 痛みが徐々に引いていく。
 完全に痛みが引くと、男の手が離れる。


「多分治ったと思うけど、大丈夫?」

「……はい。治りました。……ありがとう、ございます」

「お礼を言われるようなことじゃないよ。もうそろそろオリバーが帰ってくるかもしれないから、今日はこれで失礼するよ」


 てっきりオリバーに連れられて来ているのだと思っていたので、違うことに驚いていると、男は扉へと向かっていた。

 扉を開ける前に振り返り、真剣な表情で私のことを見る。


「絶対にここから助け出してみせるから」


 助けてほしいけど、あの男が言うことをやはり簡単には信用できない。
 何も言えないでいると、男はにこりと笑う。

 その笑顔が何故かやたらと綺麗に見えた。


「また来るから、その時は俺の話し相手にでもなってよ。じゃあね」


 そう言って男は部屋から出て行く。

 一体あの男はなんなんだろう。
 オリバーにここに閉じ込められてからは、誰かにあんな風に優しくしてくれたり、笑いかけられることなんて一度もなかった。

 それに“好き”とか意味がわからない。

 ……もうこれ以上考えるのはやめよう。

 こんな時には寝るに限る。
 そう思って私は眠りにつく。
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