庇護欲強めの彼に守られ、愛されました
「大丈夫?! 今、悲鳴と大きな物音が聞こえたけど?」

「うるさかったですよね。すみませんでした。大丈夫です。今ちょっと取り込み中で……本当は、大丈夫でもないんですけど」

「その肩、どうした?」

 先ほど壁で強打した左肩が痛くて(さす)っていたので、それを心配されてしまったようだ。

「ああ、これは……」

 恥ずかしさが(まさ)り、理由をはっきり口にしないまま苦笑いを浮かべる。
 なにが起こったのかを正直に話すかどうか、モジモジしながら迷う私とは反対に、彼の顔はさらに険しくなっていった。

「ごめん、ちょっと入らせてもらう」

「え?! 剣崎(けんざき)さん!」

 彼はひとこと断りを入れるのと同時に、玄関ドアから体を滑り込ませて私の部屋の中に入った。
 あわてて追いかけたがもう遅い。生活感たっぷりの部屋をしっかりと見られてしまった。
 それに困惑しつつも、私が今一番気がかりなのは、あの黒い生き物が絶対にまだどこかにいることだ。

「ひとり? てっきり知り合いとか友達とトラブって、相手が暴れ出したのかと……」

「いえ、そうじゃないです」

「よかった。安心した」

 どうやら彼は、私が危険な目にあったと勘違いしたみたいだ。
 もしもまだ部屋の中に私以外の誰かがいるのなら、救い出さなければと考えてくれたのかもしれない。

「じゃあ、なんであんな叫び声を?」

「そ、それは……」

 説明をしようと口を開きかけたそのとき、黒い生き物が剣崎さんの背後を横切った。

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