推し一筋なので彼氏はいりません



「その子どうしたの?大丈夫?」


「応援ボードが当たって鼻血が出てて。
ちょっと避難しに来てもらった。」


「当てた子は?謝ったの?」


「それは分かんない。
私の見る限りでは謝ってないけど。」


「謝ってもらわないと。どれ?どの子?」


「まあまあ、一旦鼻血止まるまで待とう。」


このままいったら菜々春喧嘩始めちゃいそうだし。

怒るところはしっかり怒るのが、菜々春の良さでもあるんだけど、ちょっとやりすぎかなってときがしばしばあるんだよね。


「そういえば名前言ってなかった。
菅野愛衣です。」


「崎濱菜々春です。」


「あ、それが落ち着いたらでいいよ。」


鼻をつまんだまま話すのはしんどそうだから、自己紹介はあとにしてもらって、とりあえず3人で引き続き試合を観戦することにした。


「森本志織です。
さっきは声をかけてくれてありがとうございました。」


「いえいえ。
他に痛いところとかないですか?」


「はい、大丈夫です。」


「よかった。」


「対応が慣れていてとても助かりました。
鼻血出すことなんてないので、慌ててしまって。」


「そうですよね。自分は中学時代の部活の時に、顧問の先生に教えて貰ったことがあったので。」


「何部だったんですか?」


「バスケ部でした。」


「あぁ、だから今日も?」


「いや、そういう訳でもないというか……。」


「試合に出る人に観に来てって誘われたんですよ、愛衣。」


「そうだったんですね。
確かにこんな素敵な方だと誘いたくなる気持ちも分かります。」


「いやそんな、素敵だなんて……。」


私は特になんの取り柄もないただの遥斗くんオタクですよ。


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