推し一筋なので彼氏はいりません
「菅野さん、おはようございます。」
「あ、え、おはようございます?何故ここに?」
なぜか私の教室の前で、昨日の……、あの…ちょっと名前が出てこないけど、あの人が待っていた。
「俺のこともっと知れば付き合ってくれるかと思って、ここで待ってたんです。」
相変わらずどうすればそういう思考になるか理解ができない。
私は昨日お断りして終わったつもりでいた。
「何を知れば付き合ってくれますか?」
「いや別に知りたいと思ってないし、迷惑なんでやめてもらっていいですか。」
「はっきり言いますね。」
「あ、つい……。すみません。」
「大丈夫です。俺諦めるつもりないので。」
いやだからなんで!?
「そもそもなんで私なんですか?」
「え、んー、……一目惚れ?」
今変な間あったからこれは嘘だな。
それにそんな一目惚れされる容姿じゃないし。
「嘘下手ですね。」
「いやまあ一目惚れっていうのとはちょっと違うけど、なんていうか……。」
そこまで言うと、私にだけ聞こえるように小声で、“一蹴り惚れ?”と言った。
「?何の話ですか?」
過去をふりかえってみたけどまったく身に覚えがない。
「金曜日に隣駅の近くで、確か夕方くらいだったかな。」
金曜日……隣駅……、あぁ!
学校帰りに遥斗くんグッズを買いにショップに行った日かな。
帰り、やたらしつこく声をかけてくる男の人がいて、最初は無視してたんだけど、遥斗くんのグッズが入っている袋に触れてきたから腹立って股間蹴ってダッシュで人混みに逃げたやつかな……。
あれを見られてたのか。
いや、にしてもそれをみて惚れるとは……?
「思い出しました?」
「はい。」
「あれは最高でした。
制服見て同じ学校の子だって知って、昨日校門で待ち伏せして思わず昨日告白を。」
「……なぜすぐ告白?」
会話してみたいと思ったとかの方がまだわかる。
いや、それでもわからないけど。
「あの子と付き合えば楽しそうだな、って思ったから?」
「私既に好きな人いるので無理です。」
「え、まじか。
あ〜、そういうこと考えてなかったな。そうか、そういうこともあるか。
けど好きな人ってことは付き合ってはないんですよね?まだ俺に可能性ありますね。」
まあ付き合えないよね、二次元だから。
けどだからって自分に可能性があるって思えるのはなんでだろう。
「……頭の中お花畑ですか?」
「あっははっ、はじめて言われました、そんなこと。
確かに頭の中どうなってるの、って聞かれたことはありますけど。」
「あぁ、特進科ですもんね。」
「よく知ってますね。」
「バッジ着いてるんで。」
「あ、そっか。
残念。少しは俺の事気にしてくれてたのかと思ってました。」
「いえ全く。」
名前すらも忘れましたが。
プライバシーがどうの、って名札をつけることもなくなったけど、絶妙に名前思い出せない人と話す時には不便だな。