推し一筋なので彼氏はいりません
「ちょっと飲み物買ってくる。」
「おっけー。」
「菜々春もなんかいる?」
「いや、大丈夫。ありがと。」
ハーフタイムになったところで、私は飲み物を買いに体育館を出る。
りんごジュースが売ってる自販機ちょっと遠いんだよな、と思いつつ、体育館そばの自販機横を過ぎた。
「帰っちゃうんですか?」
ふいに後ろから声をかけられて振り返ると、汗だくの佐山先輩が立っていた。
「いや、飲み物買いに行こうと思って。」
「そっか。
俺もついて行っていいですか?」
「え、休まなくていいんですか?
あとなんか作戦立てたりとか……。」
「大丈夫大丈夫。
歩いてる方がクールダウンにはいいし、それに何かあれば後で教えてくれるから。」
そういうと私の隣に並んで一緒に歩き出す。
「そうですか。」
「そうです。
それで?どうでした?前半の俺。そこそこ点入れたし、そろそろ付き合ってくれます?」
全く話の流れが掴めない。
点入れたからって付き合う約束とか別にしてなかったはず。
「確かにバスケは上手いんだと思いますが、それと付き合うことは別の話です。」
「えー。カッコいい惚れた、ってなりませんでした?」
なんだその軽率な惚れ方は。
あ、けど遥斗くんを好きになった時は、やばいカッコいい惚れた、くらいのノリだったかもしれない。
「なりませんでした。」
「残念。
でも今日は来てくれただけでも嬉しいからいいです。
菅野さん来ないと思ってたから。」
「まあ、誘われたので一応……。」
「優しいですね。
なんだかんだ毎朝待ってる俺を邪険に扱わないとこも、さっき知らない子を心配して声掛けてたのも、こうやって約束してないけど試合観に来てくれるとこも。」
森本さんに声かけるとこ見てたんだ。
「試合中によそ見しちゃダメですよ。」
「菅野さんが魅力的なのが悪いんですよ。そのせいでいつの間にか俺の視界に入ってくる。」
「はいはい。」
褒め方がもうよくわからんくて怖い。
というかこれは褒めてるのかな?