推し一筋なので彼氏はいりません



「何飲むんですか?」


くだらないやり取りをしているうちに、気づけば自販機の前まできていた。


「りんごジュース。」


「なるほど。それでこっちの自販機に来たんですね。」


「はい。」


小銭を入れようとすると先に先輩が小銭を入れて、しかもりんごジュースのボタンを押した。


「はい、どうぞ。」


「いやいいですよ。」


「試合来てくれたお礼です。」


「そんなのお礼要りません。」


「じゃあ、ジュース奢るだけで、佐山先輩優しい!付き合う!ってならないかなっていう下心です。」


「なりませんね。」


「ならないか。
ま、貰ってください。俺りんごジュース飲まないし、無駄になっちゃいますよ?」


「じゃあ120円払います。」


「いいって〜。ほら、女の子に奢ってカッコつけたいって男の気持ち、素直に受け取ってよ〜。」


ずるいやり方だ。

そんな言い方されたら断るのも申し訳なくて断りづらい。


「……わかりました。」


「よかった。」


「ありがとうございます。頂きます。」


「どうぞ〜。

菅野さんって今日の試合、最後までいてくれるんですか?」


「そのつもりです。」


「そっかそっか。」


「ん?なんですか?」


「いや、ただ単に嬉しいなと思っただけですよ。
後半も頑張りますね。」


応援する人がひとり増えたところでそんなに戦力にはならないと思うけど。
まあ先輩が嬉しいならそれでいっか。


「はい。応援してます。」


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