推し一筋なので彼氏はいりません



「何か飲み物買ってきますね。確かさっきあっちの方で見かけた気が。」


暑さと食べてばかりのせいで喉が乾いた。


「俺も行きます。」


「いいですよ。先輩の分も買ってくるので。」


「さっきも声かけられたでしょう?菅野さんは気づいてないかもしれませんが、菅野さんは可愛いんです。
あの辺は人気がなかったですし、さすがにひとりで行かせるのは危ないので、俺もついて行かせてください。」


“可愛い”なんてそんなこと、いままでの人生で親くらいにしか言われることがなくて、普通に照れる。

こんなことを言われたら私は素直に頷くしかなくて、先輩と一緒に自販機に向かった。


────
──


「今日、楽しかったです。
最初は先輩のこと変な人としか思ってなかったんですけど、先輩といると結構楽しいなって気づきました。」


「俺の方こそありがとうございました。
俺も楽しかったです。」


「そうだ。森本さんたちも上手くいったって。」


「それならよかったです。本来そこがメインでしたもんね。
俺らが必要だったのかは定かでは無いですが。」


「確かに。最初の10分くらいですもんね、一緒にいたの。」


「上手くいったなら向こうからすれば合流する必要もないですしね。

そろそろ帰りましょうか。送ります。」


「ありがとうございます。」


今日で先輩がわりと心配性なことがわかったため、私は素直に送られることにする。


前も学校から私の家まで一緒に歩いたことがあったけど、今日はその時の空気感とは違って、よそよそしさのようなものが無い。


今日は森本さんたちのためだったけど、意図せず私たちの仲も深まったように思う。


「菅野さん。」


「はい?」


「もし良かったら、夏休み中にまたどこか行きませんか?」


「ふたりで、ですか?」


「はい。」



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