推し一筋なので彼氏はいりません



土曜日。


用事があって学校の近くの道を歩いていると、佐山先輩が前から歩いてくるのが見えた。

私が先輩を見つけるのと同じくらいに、先輩も私に気づいたようで、目が合う。


私は先輩の前で立ち止まった。


「お久しぶりです、菅野さん。」


「お久しぶりです。
先輩、大丈夫ですか?
長く学校休んでいたみたいですけど。」


「大丈夫ですよ。
少し家庭内で問題があったというか……、そんな感じなので。
俺はこの通り元気です。」


そういって先輩はいつもみたいに笑ったけど、少し疲れているようにも見えた。


「学校戻ってくるんですか?」


「はい、月曜日からは行きますよ。」


「おうちの問題はもう大丈夫なんですか?」


「はい、もう解決しました。」


「よかった。
あ、すみません。質問ばかり。」


「いえ。

……あの、菅野さん。」


「はい。」


「今から少し時間ありますか?」


駅前の本屋に行こうと思ってただけだし、別にそれは今日じゃなくてもよかったから、時間はある。


「はい、ありますよ。」


「もう少しだけ話したいんですが、一緒にお茶でもどうですか?」


「いいですよ。行きましょう。」


「ありがとうございます。」


今日の先輩はいつもみたいに、にこにこふわふわしてなくて、落ち着いていて静かだった。


「ここにしましょうか。」


「はい。」


近場のカフェに入って、2人がけの席に向かい合わせに座る。

店内は土曜日ということもあって、程よく賑わっていた。


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