推し一筋なので彼氏はいりません



「菅野さんおはようございます。好きです。」


「……もはや好きですまでが挨拶になってますね。」


「ちゃんと毎回好きだと思って言ってますよ?
菅野さんの姿みたら、好きだな〜って気持ちが溢れてくるんですよ。」


「それは分かります。私も遥斗くんみたら好き!ってなります。」


「でしょう?」


まじか。
ということは、私が遥斗くんに好き可愛いカッコいいって思うように、先輩も私に思ってるってこと……?

いやでも私の場合は推しだし……。

推しに置き換えるのも万能じゃないかもしれない。


「でも先輩に対してはなりません。」


「分かってます。俺はただ言いたくて言ってるだけなので、そうなんだなって思ってくれれば十分です。」


「そうですか。」


ちゃんと断ろうと思って言ったのに、少しも折れてなさそう。

今まで通りしばらく軽く流していくのが一番かもしれないな。

この前の集会の時といい、この人メンタル鬼強みたいだし。


「そういえばこの前、なんで全校集会なんかであんなこと言っちゃったんですか?」


「あそこで言えば俺に告白してくる人減りそうだし、びびって嫌がらせもやめてくれそうだし、あと菅野さんが嬉しい好き!ってなるかなって。」


「最後のやつだけは残念ながらなかったですね。」


「えー、そうなんですか?それは残念。」


「でも嫌がらせはなくなりました。ありがとうございます。」


「いえいえ。元はと言えば俺のせいなので。
俺が勝手に好きって言ってるだけなのに、菅野さんが傷つくのはおかしいと思ってたんです。」


「仕方ないですよ。先輩モテるし。」


「上っ面だけ見て寄ってくる人ばかりですよ。そんな人に好かれても嬉しくありません。

それに“好き”なんてそんな不確実で不安定なもの……。
まあそう言いつつ、俺も菅野さんに好きって言ってますけどね。」


先輩一瞬表情が陰ったような……。

気のせいかな。


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