推し一筋なので彼氏はいりません
ダメだ、会話のテンポ早くて全然状況がのみ込めない……。
「あの、今の、花純……さん?って女の人が好きなんですか?」
「そうですね。
危ないのでもし見かけても近寄らないでくださいね。」
「あ、はい。
私、先輩があんな風に話してるの初めて見て、花純さんが好きなのかと思いました。」
「いやまさか。家が近所で昔から関わることが多かっただけですよ。
それに、好きじゃないからあんな話し方できるんです。」
「でも可愛かったし……。」
「菅野さんの方が可愛いですよ?」
「それはないです。」
「あります。
というか、俺には菅野さんしか可愛く見えないですね。」
「……さすがにそれは嘘。」
「本当です。」
当たり前とでも言うように恥ずかしげもなく言ってのけるから、それが嬉しくて恥ずかしかった。
「じゃあ文化祭見て回りましょうか。
私気になってるのがあって──」
反論してもどうせ言い返されるだろうし、早々に話題をかえて、いざ文化祭…!
一旦食べ物系は置いておいて、演劇、お化け屋敷、謎解きと回って行った。
「謎解き、思っていたよりも難しかったですね。」
「え、ほんとに思ってます?結構あっさり解いてませんでした?」
「運良くたまたま思いついただけで、ほんとに思ってますよ。」
「へぇ。」
「ほんとだって。」
先輩と話していると、視界の端に見覚えのある顔がうつる。
「……あれ、花純さんじゃないですか?」
もしかして絡まれてる?
制服着てないし、うちの学校の人じゃなさそうだし、大丈夫かな。
「え、まだいたんだ。どこですか?
……って、菅野さん?」
いろいろと考える前に足が動いていて、先輩の声が遠くで聞こえる。