推し一筋なので彼氏はいりません
終業式も終わって、帰ろうとしている私の視界に、校門付近に立っている見覚えのある人影がみえた。
周りは見覚えのない美人に、ちょっとざわざわしている。
「花純さん。」
「愛衣ちゃん!お疲れ様。」
「ありがとうございます。
今日、駅で待ち合わせじゃなかったですか?」
「そうだったんだけど、なんかそわそわして家も早く出ちゃったし、どうせなら迎えに行っちゃおうと思って。
迷惑だったかな?」
「いえ、全然。
あ、けど着替えたいので1度家に戻ってもいいですか?ここから歩いて10分ちょっとなので。」
「もちろん。
私もついて行っていい?愛衣ちゃんのおうち。」
「いいですよ。」
「やった〜。行こ行こ。」
ニコニコしながら私の半歩くらい後ろを歩いている花純さん。
可愛い。
さっきも花純さんを可愛いとか綺麗っていう声を多々聞いたけど、私もその通りだと思う。
花純さんも、佐山先輩も、菜々春もなんだけど、周りに顔が整っている方が居るせいで、私まで美形だという錯覚に陥りそう。
美形に好かれる丁度いい顔なのかな、私。
「ねぇねぇ愛衣ちゃん。」
「はい。」
「今まで誰かと付き合ったこととかは?」
「ないです。
私、好きなアニメ作品がありまして、そこに夢中であまり恋愛に興味がないというか……。」
「どんなアニメ?」
「とある高校のバスケ部のお話なんですけど、登場人物がみんな個性的でかっこよくて……。」
「間違ってたらごめんだけど、もしかしてそれって──」
「花純さんも知ってる作品だったんですね!嬉しいです。」
「愛衣ちゃんはどのキャラが好きなの?」
「遥斗くんです。」
「あ〜、わかる。バスケしてる時と普段のギャップがいいよね。」
「そうなんです!」
「愛衣ちゃんと共通の話題があって嬉しいな。
暁良とはどんなこと話すの?暁良アニメとか観なさそうだけど。」
「それがそのアニメも観てくれたし、結構遥斗くんの話もするんですよ。
あと食べ物の話とか?ほんとにたわいもない話してると思います。」
「ほんと暁良愛衣ちゃんのこと好きなんだね。
私の知ってる暁良は、女の子に一切興味無くて、会話の内容すらほぼ覚えてなかった。」
「でも花純さんと仲良いですよね?」
「それは私が、暁良のことを意識する可能性が絶対にないってわかったからだろうね。
それまでは当たり障りのない対応されてたよ。
あ、小さい頃はそうでもなかったけどね。」
「そうだったんですね。」
「うん。
けど、暁良に言い寄って家まで着いてきてた子を、うちの家にあげて慰めてたら、気づけばその子と私が付き合うことになって……。
それを知ったくらいから暁良の私に対する警戒心もとけたかも。」
「……すごいですね。」
他の人が真似したくてもできない技だろうな。
「もちろんその子とはとっくに別れてるし、今は愛衣ちゃん一筋だよ?
私好きになったら一途だし。」
「ありがとうございます……?
あ、私の家そこです。」
「じゃあ待ってるね。」
「良かったら入ってください。」
「え、いいの?」
「はい。きっと母も喜びます。」