推し一筋なので彼氏はいりません
それから私たちは、本屋に寄って普段読んでいる本をすすめあったり、アニメショップに寄って主に遥斗くんを探したり、適当にショッピングモールの中を歩いてまわったりした。
街はクリスマス仕様に飾り付けられているのに、それには目もくれず私の好きそうなものばかり探している先輩がなんだか可愛く思えた。
「こういう何も決めてないのもありですね。」
「ですね。今日で菅野さんの好みについて、新たにいくつか知ることができました。」
「それはよかったですね。」
歩き疲れた私たちは、モール内のちょっとしたスペースに置かれてある椅子に座って休憩しているところ。
先輩とたわいもない話をしていると、ふと人が近づいてきているのに気づく。
私がそちらに視線を向けたのと、その人が先輩に声をかけるのとが、同時くらいだった。
「暁良?」
その声を聞いて驚いたように振り返った先輩は、すぐに険しい顔になった。