推し一筋なので彼氏はいりません
「少しだけいいですか?」
夜ごはんも一緒に食べて、もうすぐ私の家に着く頃、先輩がそう切り出した。
「はい。」
「やっぱりショッピングモールでのこと、話しておこうと思って。
興味なかったらすみません。」
「いえ、そんなことは。
聞かせてください。」
「あの人、母親なんです。
最近親が離婚したんですが、元々父親のお金で生活していたから、お金に困って俺に話しかけてきたんだと思います。」
「そうだったんですね。」
「うちの親、どっちも不倫してて、もう何年もずっと家族として機能してなかったのに、全員そのまま放っておいたんです。父親の体裁のために。
それをついに母親がぶっ壊して、今はバラバラ。
まあ正直清々しましたけどね。」
本当にそう思っているんだろうか。
寂しかったりしないのかな。
「それでひとり暮らしを……。」
「そうです。
菅野さんならいつでも遊びに来てくれていいですよ。」
「行きませんが。」
「えー、来ないんですか?」
「特に用事ないので。」
「残念です。」
「でも、先輩が寂しくて仕方ないっていうなら、美味しいデザートを用意してくれれば行きますよ。」
「ふふ、菅野さんらしいですね。
ありがとうございます。」
そんなに気が利いたことも言えないし、先輩の気持ちが分かるっていうわけでもないけど、私が何か出来るならしたいと思う。