推し一筋なので彼氏はいりません



その日から、毎日というわけではないけど、先輩はたまに放課後まで待っててくれて、一緒にどこかに寄って帰ることが多かった。

甘い物を食べたり、本屋に寄ったり、ただ公園で駄弁ったり、付き合い始めたんじゃないかと噂が流れるくらいには、一緒にいる時間が急に増えた。


「愛衣、最近佐山先輩とよく一緒に帰ってるけど、付き合ってるわけじゃないんだよね?」


「うん。」


「ほんとすごいね、佐山先輩。
愛衣に弄ばれても、ずっと健気にアプローチしてくれる。」


「弄んではない。」


「でも愛衣も一緒に帰るの結構ノリノリじゃん。
自分から誘ったり、誘いには毎回乗るけど、特に先輩に気持ちの表明はしない。」


「でもちゃんと断ってはいるよ?」


「愛衣の態度的にわんちゃんありそうな気がして、先輩も諦められないんじゃん?」


「じゃあどうしろって?」


「もう断固拒否して完全に関係を断つか、付き合うか、どっちかにしたら?」


「えぇ。友達じゃダメなの?」


「愛衣はいいと思うけど、先輩辛くない?
たとえば愛衣に彼氏が出来たとして、友達だったら先輩はそれを見守らないといけないんだよ?」


「……そう言われると確かに?」


「まあすぐにとは言わないけど、先輩もうすぐ卒業だし、さすがにその頃にははっきりしなよ。」


「……うん。」


こんなこと考えてもみなかったけど、よく考えれば酷なことしてたのかな。

先輩も誘ってくれるし誘いに乗ってくれるし、楽しいから私は良かったけど、私は先輩の優しさに甘えてたってこと?


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