推し一筋なので彼氏はいりません
「終わった〜。」
私が勉強しているときは話しかけてこないけど、せっかく菅野さんが居るのに、と言って作業中でもなんとなく話を続けていたためか、先輩はそこそこ長い時間パソコンと向き合っていたと思う。
「お疲れ様です。」
先輩はメガネを外してパソコンを閉じると、隣にいる私に手を伸ばす。
大人しく引き寄せられて先輩の膝に座り、腕に収まる。
「まだ夢みたいです。
うちに菅野さんがいて、しかも俺の彼女で、こうやって抱きしめられる。」
「もう何十回とここに来てますよ?」
「菅野さんのことが好きすぎて、何回来ても何回でも思ってしまうんです。」
「そうですか。」
「よかったら今日泊まって行きませんか。」
「……母に聞いてみます。」
「安心してください。お母さんの許可ならとりました。」
「いつの間に……。」
うちの家に来る度に母と仲良くなって、気づけば連絡先まで交換したらしいふたりは、度々連絡を取りあっているらしい。
「外堀から埋めていく作戦です。」
「策士ですね。」
「菅野さんを離したくないので。」
「本当にどう足掻いても離してくれなさそうですね。」
「えっ、離れるつもりなんですか?」
「いや特にその予定はないです。
それに先輩といるととても快適だし、むしろ先輩こそいいのかな〜って。」
「計画通りです。そうやって俺以外じゃダメにさせる予定なので。」
「怖。」
「まあというのは冗談で、ただ好きな人のために何かしたいだけですよ。」
「それにしても本当に何から何までしてくれますよね。」
「だって二次元の人間には菅野さんに至れり尽くせりできないでしょ?」
「遥斗くんと張り合ってます?」
「一瞬でも俺でいっぱいになればいいのにとは思ってます。」
「そうですか。」
もうわりとなってる気がするんだけど。