ムーンサルトに 恋をして
**
「お先に失礼します」
「お疲れ様でした~」
クレカタイプのカードを読み込ませ、退勤にする。
連日残業している私は、久々に少し早めに上がった。
といっても、既に21時過ぎ。
その足でとある場所へと向かった。
*
「すみません」
「はい」
「ジル・トンプソンさんはいらっしゃいますか?」
「いますよ、ちょっと待って下さいね~」
アポなし突撃でサーカステント裏のスタッフ用の仮設住宅を訪れた。
数分待つと、ジルが姿を現した。
「ナナっ!」
私の姿を見つけて駆けて来る彼。
「お酒?……あ、皆が祝ってくれたんだね」
「ん」
彼からアルコールの香りがプンプンとして来る。
「どうしたの?」
「初日お疲れ様。それと、Happy Birthday ♪」
「えっ、…… thank you!」
モール内のお店でプレゼントを買った私は、それを彼に渡す為に。
「ジル、お休みってあるの?」
「あるよ」
「じゃあ、その日が分かったら教えて?」
「いいけど、…… why?」
「連れて行きたい所があるの」
「OK、wait a minute……3 days later」
彼はスマホで確認した。
「3日後ね、OK」
「ジル~~~ッ」
「あ、ごめんね、…calling」
部屋から彼を呼ぶ声がした。
私は手で彼に合図して部屋に戻るように促した。
そして、手を振ってその場を後にする。
*
モールから車で10分ほどのマンスリーマンション。
短期配属先はいつもこれで間に合わせている私は、帰宅してすぐさま有給休暇申請をネット申請した。
すると、スマホに受信を知らせるメロディーが鳴った。