ムーンサルトに 恋をして

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浴衣を返却し、帰路に着く。
帰りにお寿司屋さんで夕食を済ませて、都心経由ではなく海ほたる経由で。
トイレ休憩も兼ねて海ほたるに立ち寄って、しばし夜景を楽しむ。

海風の心地よさに目を瞑って風を楽しんでいると、体が拘束された。
思わず目を見開くと、ジルに抱き締められていた。

「ジル?」

ジルは無言で抱き締めたまま。
彼の腕の中は安心感と同時に、動揺も隠し切れない。
鼓動が彼に伝わるんじゃないかと。

「帰りたくない」

たった一言。
だけど、彼の気持ちはその一言に全て集約されている。
あえて『好き』だと口にしなくても、彼の気持ちが分かってしまった。
私と同じなんだと。

7年前とは違う。
歳を重ね、恋の痛みも知っている。
だから、もう後悔はしたくない。

「ジル」

彼の言葉にちゃんと応えるために。
彼の瞳を真っすぐ見つめる。
……あなたが好き、と。

逸らすこともせずに見つめていると、頬に彼の手が添えられ……。
彼の唇が重なった。

デートスポットでもあるから、近くに人がいるというのに。
そんな視線すら感じないほど、彼の熱いキスに酔いしれる。

7年間ずっと一時停止したままの私の恋は、漸く再開出来た。
それも、あまりに長い期間停止したままだったから、故障したかと思うくらい暴走気味に。



「そろそろ帰ろ?」
「やだ、離したくない」
「もうどこにも行かないから」
「……」

彼が言いたいことは何となく分かる。
2週間後には茨城県に移動しなければならない。
だから、私が千葉にいても離ればなれになる。

分かっている。
だって、仕方ないじゃない。

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