ムーンサルトに 恋をして
輝ける場所

2週間があっという間に終わりを告げようとしている。

小田原城デートをして以来、ジルとは毎日夜にモールの駐車場で待ち合わせして、近くをドライブしたり夜景を観たりしてデートを重ねた。

終わりが分かっているからこそ、1日1日が本当に大切で。

だからこそ、7年前のように未来に悲観して諦めるより、1秒でも多く傍にいて彼との想い出を作りたいと思えるようになっていた。



「お先に失礼しますっ」
「お疲れ様でした~」

退勤にすべくカードを読み込ませ、従業員出入り口から駆け出す。
更衣室で着替えるのもショートカットして、制服のまま自分の車がある駐車場へと。
彼からメールが届いていた。
『ナナの車の所で』と。
だから、今猛ダッシュしている。

息を切らしながら駐車場に辿り着くと、彼は車に凭れかかりスマホを眺めていた。

「ジル」
「あ、ナナっ」

鍵を開けて乗り込みエンジンをかけて車内を冷やす。
最後の夜だから、仕事を早くに切り上げた。
19時過ぎ、日中の暑さが残っていて空気がもわっとする。

「どこに?」
「ひみつ」

最後の夜くらいゆっくりしたい。
次はいつ会えるか分からないから。

**

車が到着したのは……。

「What shop?」
「ウフフッ」

車から降りて、彼の腕に自分の腕を絡ませて。
エレベーターで6階に上がり、通路を進んだ先。
鍵で開けドアノブを捻る。

「どうぞ」
「……ナナの?」

< 34 / 46 >

この作品をシェア

pagetop