覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)
 八尋の頭の中で、

 衣茉が有名になる。

 離婚される、と勝手に話が広がっていっているようだった。

「あの~、前から思ってたんですけど。
 私より八尋さんの方が想像力豊かですよね」

 店長と秋馬が笑ったとき、大きな声がした。

「すごい!
 織原先生の新刊が!

 私、大ファンなの!」

「……あそこに見事なサクラが」
と秋馬が笑って振り返った先には明子がいた。

 最近彼女とちょっといい感じの吉行もいる。

 沢木の雑誌に載った衣茉の小説は、衣茉の代表作となった。

 長く売れたのは、秋馬と出した恋愛小説の方だったが。

 ストーカーまがいのことをしてしまうまでに追い詰められた女性の恋心がよく表されていたらしい。

 正直言って、今でもそんなに知られてはいない、鳴かず飛ばずの作家だが。

 でも……と衣茉は八尋を見つめる。
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