完璧生徒会長はとろける甘さの恋を描きたい
【第13章】
○事故現場
○校舎の一角
○生徒が集まって騒ぎになっている

晴陽「救急車は呼んだのか!」
<役員に大声で聞いている晴陽>

役員「はい! 多分そろそろ!」
<焦っている役員>

芽生「葉、葉……!」
<寝かされている葉を必死で呼び、縋る>

葉「……っ、めい……」
<頭に止血のタオルを巻かれた葉、なんとか芽生を見る>

千和「煎条くん、動かないで」
<近くからそっと声をかけて、動きを制止する>

葉「なく……、なよ」
<なんとか声を出す>

芽生「葉が死んじゃったら……わたしぃ……!」
<顔を覆って泣いている>

○サイレンの音

晴陽「来たぞ! 救急車だ!」
<晴陽がほっとした様子で声を上げる>

○バタバタ!(大きな足音)

○救急隊員が担架を持って入ってくる

隊員「怪我人はどちらですか!」
<何人かの隊員、焦った様子で近付いてくる>

晴陽「こっちです! 早く……!」
<晴陽が誘導する>

○サイレンの音

○救急車が去っていく
○晴陽と千和、ほか役員たちが、校門で見送っている

晴陽「大変なことになったな……」
<険しい顔>

千和「芽生……ついててくれるみたいだけど、大丈夫かな」
<一緒に救急車に乗って行った芽生のことを心配する>

晴陽「大丈夫さ。落ち着いた頃に病院に様子を見に行こう」
<そっと肩に乗せ、穏やかに言う>

千和「……うん」
<少し安心して、晴陽を見上げる>

晴陽「ごめんな、千和」
<すまなさそうに、ぽつっと謝る>

千和「なにが?」
<不思議そう>

晴陽「俺が強く煎条を責めすぎたかもしれない」
<悔やんでいる>

千和「晴陽のせいじゃないよ……そんなふうに言わないで」
<顔を歪め、作り笑いで言う>

晴陽「ありがとう。……あの件については、今度話そう」
<同じく作り笑いをして、静かに言う>

千和「そうだね」

晴陽「さ、俺たちは事故を確認しないと。状況はどうなってる?」
<手を離して、ぱっと振り返り、役員たちに声をかける>

役員「はい! 美術部の展示を下ろしているところへ、煎条がちょうど通りかかって……それで運悪く……」
<役員たち、順序だてて説明をする>


○翌朝、千和の家

○ベッドで目を覚ます千和

千和「ん……、疲れてたみたいで、よく寝ちゃった」
<目をこすりながら起き上がる>

♪♪♪(着信音)

○スマホが鳴る

千和「あ、電話?」
<慌てて枕元にあったスマホを掴む>

千和「……芽生!」
<芽生の名前が表示されているのに気付いて、息を呑む>

千和「も、もしもし!?」
<張り詰めた様子で、電話に出る>

○午前中、病院
○葉の病室
○千和と晴陽がお見舞いに来ている
○前日からついていた芽生、ベッド脇の椅子に座っている

葉「あ、降矢。わざわざありがとう」
<ベッドの上に座った葉、近付いていった千和を見て、穏やかに言う>
<入院着を着て、頭に包帯を巻いている>

千和「煎条くん、大丈夫だったの?」
<心配そうに聞く>

葉「ああ。打ったショックで思考がおぼつかなかっただけで、少し切っただけだったんだ。脳波も異常ないって」
<頭に手をやり、包帯にそっと触れて>
<安心したように言う>

芽生「良かったよぉ~!」
<隣に座っていた芽生、ぼろぼろ涙をこぼす>

葉「お、おい、芽生。まだ泣くのかよ」
<そちらを見て、おろおろしてしまう>

芽生「だって……本当に心配したの……!」
<泣きじゃくりながら、本当に安心したという顔>

葉「……お前」
<目を見開き、驚いた顔>

晴陽「煎条」
<千和の後ろから晴陽が声をかける>

葉「! 会長」
<ハッとした様子で、晴陽を見る>

晴陽「あの件については後日話す。俺も言い方が悪かった。すまない」
<硬い口調で話し、謝る>

葉「いえ……俺こそ」
<顔を歪め、ぼそっと言う>

○安堵した様子の病室内

煎条くんの怪我も大したことなくて、みんなで安心した。
数日で退院できるらしい。

○千和と晴陽が帰ろうとする

千和「じゃ、私たちは帰るね」
<帰ろうとする様子>

煎条「ああ。休みだってのに来てくれてありがとう」
<穏やかにお礼>

晴陽「しっかり休めよ」
<少しぎこちない微笑になって言う>

煎条「ありがとうございます」
<安心した様子>

晴陽「さ、千和。行こう」
<千和の肩を抱き、病室を出る>

○病室、残された葉と芽生

葉「芽生も。ずっとついててくれたんだから、帰って少し休めよ」
<芽生を優しく見て言う>

芽生「うん……でも、もう少し」
<名残惜しそう>

葉「そっか。心配してくれて、ありがとう」
<優しい微笑になる>

芽生「ううん。私なんかにいられても嬉しくなかったと思うけど」
<困ったような顔>

葉「そんなふうに言うなよ」
<顔を歪める>

芽生「だってそうでしょ……」
<うつむいてしまう>

葉「そんなわけあるか。俺は……ずっと芽生が呼んでてくれたから安心できたのに」
<無理をして笑い、気持ちを話す>

芽生「葉……」
<顔を上げ、切なげに呼ぶ>

葉「ありがとう、芽生」
<優しい笑みになり、心からお礼を言う>

芽生「……葉。あのさ」
<膝の上でぎゅっと手を握り、思い切る>

葉「うん?」

芽生「私……、葉が死んじゃうかと思ったら心臓が止まるかと思った」
<苦しそうに話す>

葉「大げさな」
<苦笑>

芽生「そのくらい怖かったの。葉を失うことが」
<苦しそうに、真剣に>

葉「……!」
<目を見開く>

芽生「だから……、言ってもいいかな? あのとき言えなかったこと……」
<顔を上げ、切なげに言う>

○数日後、晴陽の部屋
○ソファでまったりしている

晴陽「ドタバタしたけど、文化祭も無事に終わって、煎条も退院できた。これで一安心かな」
<心から安堵できたという様子>

千和「うん、本当に良かったよ」
<同じく、安心した様子>

晴陽「デートも安心してできそうだよ。どこに行きたい?」
<にこやかに>

千和「え!」
<ドキッとする>

晴陽「千和と二人きりで過ごせるところがいいな」
<色っぽい笑み>

千和「え、え……」
<ドキドキしてしまう>

千和(それって……!?)

晴陽「ふっ、なに想像したんだよ」
<おかしそうに噴き出す>

千和「なっ!?」
<驚き、赤くなる>

晴陽「スキンシップなら俺の部屋でいいだろ」
<しれっと言う>

千和「……っ! そ、そうじゃないよ!」
<真っ赤になって慌てる>

晴陽「俺の部屋のほうが……、こうやって」
<座り直して、千和に腕を伸ばす>

千和「ひゃ!?」
<抱きしめられ、赤くなって変な声を出す>

晴陽「こうしてお前をしっかり抱きしめられる……」
<千和をしっかり抱きしめ、幸せそうに>

千和「……晴陽」
<微笑になり、そっと晴陽の腕に手を乗せる>

晴陽「本当はデートより、これが一番幸せなんだ」
<心から幸せそうに>

千和「……私も……かも、しれない」
<照れ臭くて濁してしまう>

晴陽「『かも』なのか?」
<追及してくる、少し意地悪>

千和「……私もです」
<赤くなって、ぼそっと言う>

晴陽「ありがと。……千和」
<満足げにふわっと笑う>
<そのあと、千和を呼ぶ>

千和「うん?」
<何気なく返事>

晴陽「実は言いたかったことがあるんだ」
<ちょっと声が硬くなる>

千和「なにかな?」

晴陽「……『きみここ』。あと一ヵ月くらいで最終回なんだ」
<そっと千和を離す>
<千和を見つめ、硬い声で、はっきり言う>

千和「……えっ」
<目を見開く>
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