こじらせイケメン葉澄くんの愛が重い!

第4話 葉澄くんとお試しの恋

〇葉澄に組み敷かれてキスされそうになっていると潤のスマホが鳴る。
 中断された葉澄は不満そうだが、潤は急いで逃げ出し、ごめん、と葉澄に断ってから電話をとった。矢上サトシと表示されている。

潤「もっ、もしもし!」
男の声『おー、潤。元気~?』
潤「やっちゃん? 元気元気。どうしたの?」
男の声『実は、連休に美羽たちと滋賀に行こうって計画してて。潤、今どの辺に住んでんの? あとで住所送ってくんない?』

 潤は気まずそうに笑った。

潤「あ、はは……。ごめん、滋賀からまた引っ越しちゃって……、今、東京に住んでるんだ」
男の声『東京! 大都会じゃん! ……そっかー、残念だなー』
潤「ごめんね……」
男の声『いいっていいって。じゃあ次は東京旅行計画しなきゃだな。急に電話してごめんな』
潤「ううん。またね、バイバイ」

 電話を切ると葉澄がジト目で潤を睨んでいた。

葉澄「元カレ?」
潤「ち、違うよ。友達!」
葉澄「友達。友達ね。ふーん……」
潤「本当に友達だってば!」

 潤は苦笑する。

潤「中学の初めの頃は九州に住んでたの。その時の友達で……」
潤「転校した後も、まめに連絡をくれる子たちもいるんだ。でも、離れて何年も経つと……難しいね」

 チャットツールで簡単にやりとりはできるものの、潤がいなくても盛り上がっている文化祭の写真や、潤が全く知らない先生と円陣を組む写真。進学して新しい友達と楽しそうに暮らしている様子など……。
 いいねを押しても寂しくなる潤。
 距離ができれば疎遠になっていく。学生のお小遣いで何度も新幹線に乗って会ったりするのは難しいのだ。

 潤は顔を伏せ、葉澄に背を向けた。

潤「あのね、やっぱりわたし、御門くんとは付き合えない」
潤「付き合っても、別れるのが辛くなるだけだよ。わたし、次またいつ引っ越しちゃうかわからない、し……」

 潤の言葉は途中でさえぎられた。
 後ろから葉澄に抱きしめられ、キスされている。

葉澄「やだ」
葉澄「そんな理由じゃ納得できない」
潤「みかどく……んんっ」
葉澄「潤がどこへ引っ越したとしても俺なら会いに行く」
葉澄「そんな悲しい顔させないから」

 ぎゅっと抱きしめられる。
 誰とでも仲良くなれる潤だが、恋も友情も長続きしないことを悲しく思っていた。
 葉澄の言葉にうるっと来てしまう。

葉澄「好きだよ」

 再び葉澄のキス。
 押し倒され、息が上がるほどのキスをされた潤は真っ赤。
 そんな潤の姿に葉澄も止まれなくなる。

葉澄「潤……」

 色っぽく耳元で囁かれてぞくっと来てしまう潤。

潤(~~~っ、わたし、流されてる?)
潤(御門くんは慣れてるのかもしれないけど……)
潤(ん? 慣れてる? 慣れてる、よね?)

 潤はぐいっと葉澄を押しのけた。

潤「やっぱ無理っ! 芸能人となんて付き合えないよ!」
潤(こんなに格好いいんだもん。美人女優やモデルさんと付き合ってきたに決まってるじゃん!)

 綺麗で可愛くてスタイル抜群の女の子たちを侍らせ、悪い顔をする葉澄を想像してしまう潤。

潤「わたしなんて可愛くもないしチビだし、御門くんにはもっとふさわしい人がいるよ。モデルさんとか女優さんとか……」
葉澄「? 意味わかんない。俺が好きなのは佐々木さんだよ」
潤「で、でもっ。さぞ美人と付き合ってきただろうし」
葉澄「誰とも付き合ったことなんかない。佐々木さんは俺が女優と付き合ってるとでも思ってるの?」

 葉澄は露骨に嫌そうな顔をした。

葉澄「俺みたいな無名の高校生モデルなんか相手にされるわけないじゃん。俺よりもカッコいい人たちと山ほど会ってるんだよ? ていうか、近づいてこられたら怖いしっ。俺のこと騙すつもりなのかもしれないじゃん」

 葉澄のネガティブ発動。
 あぁ……と残念そうな顔をしてしまう潤。

潤(じゅうぶんカッコイイのに勿体ない。でも……)

 完璧じゃないところを見せてくれる葉澄に絆されそうになってしまう。
 ぎゅっと胸を押さえる。
 葉澄に対して恋愛感情のようなものが少しだけ芽生え始めていた。

 そんな潤に葉澄はもう一押し。

葉澄「俺は潤を好きになったんだ」

 潤の手を葉澄が掴む。目を見て告白。

葉澄「お試しでもいいから、俺と付き合って」

 赤くなる潤。
 また引っ越すことになったらと頭をよぎるが、それよりも全身全霊で告白してくれる葉澄の姿にときめいてしまう。
 潤はうつむきながら小声で返事をした。

潤「……うん」
葉澄「今、『うん』って言った?」
潤「言っ……た」
葉澄「本当に⁉ 付き合ってくれるの⁉」

 ぱああああっと嬉しそうな葉澄のピュアな笑顔。

葉澄「潤、大好き!」
潤「きゃっ!」

 ぎゅっと抱きしめられてドキドキ。

葉澄「一緒に寝る?」
潤「寝ないよっ」
葉澄「寂しくなったらいつでも言ってね? 添い寝するから」

 抱きしめられたまま頭にちゅー。

潤「ううううう……」
潤(大型犬に懐かれたみたい……)

 いちゃいちゃべたべたしてくる葉澄に、潤は顔を覆ってしまう。


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