こじらせイケメン葉澄くんの愛が重い!
アレン「お、来た来た~!」

 スタッフと話していたアレンがビール片手に迎えてくれる。
 開放的なおしゃれなテラスは既に賑わっている。
 スタッフ、役者、マネージャーなどがいてワイワイ。
 おしゃれ空間&大人たちばかりの世界に、コミュ強の潤も「わ」と固まってしまう。

葉澄「今日はお誘いありがとうございます」

 そつのない挨拶の葉澄に潤も慌てて頭を下げる。

潤「す、すみません。おおお、お邪魔しま」
アレン「うおー! きみが葉澄っちのカノジョ⁉」

 好奇心丸出しで近寄ってきたアレン。格好良さに目がちかちかしてしまう潤。
 周囲の大人たちも興味津々で潤を見ていた。

アレン「凛々子ちゃん、来て~! 葉澄っちのカノジョ~!」

 美少女の凛々子まで登場し、ひええええ……となる潤だが、アレンも凛々子も気さくに話しかけてきた。

凛々子「やだ、可愛い~っ! はじめまして、あざみ凛々子です」
潤「はっ、さ、佐々木潤です。いつもテレビで見てます」
凛々子「やだ嬉しい~。実は、葉澄くんの彼女に会うの楽しみにしてたんだぁ~」
アレン「そうそう! 葉澄っちって心を閉ざした野生動物みたいじゃん⁉ 撮影以外は目ぇ合わないし」
凛々子「撮影期間長いのに未だに打ち解けてくれないしね」
アレン「だから、よくカノジョとうまく付き合えてるよな⁉ って意外で~」

 二人の話に拗ねたように顔を赤らめる葉澄。
 色々暴露されて恥ずかしいらしい。そんな珍しい態度をカワイイと思ってしまう潤。

潤「来るの嫌がってたけど、アレンさんたちと仲いいんだね」
葉澄「からかわれてるだけだよ」
葉澄「アレンは交友関係広いし、凛々子さんは芸歴も長いし……」

アレンは芸歴5年くらい。凛々子は子役からなので9年くらい。

潤「葉澄くんも芸歴長くない?」
葉澄「そうでもない。6年だからアレンよりちょっと早いくらい」
潤「そうなんだ。きっかけって……やっぱりスカウトとか?」
葉澄「いや、母親が冗談半分でオーディションに応募して……」

 雑誌主催のイケメンコンテスト。グランプリは16~20歳くらいの子たち。
 小学校高学年の葉澄は「審査員特別賞」。
 若すぎる(その雑誌の即戦力にはならないので)から「将来に期待!」的な賞だった。
 当時の写真をスマホで見せてくれる葉澄。

潤「わ、カワイイ!」(既にイケメンだ……)

葉澄「うち、母子家庭だったし。お金になるならいいな、って」
葉澄「こんな俺でも、必要としてくれる場所があるなら」

 モデル仕事にはあまり執着がなさそうな葉澄。
 嫌々芸能活動をしているわけではないが、楽しいわけでもなさそう……。

潤「葉澄くんは必要な人だよ」

 断言する潤。

潤「……こんな手足長くて、顔もカッコイイ高校生なんて貴重だよっ⁉」
葉澄「そーかな……。かっこいい人ならいっぱいいるけど……」
潤「『御門葉澄』は一人しかいないもん」

 自己肯定感皆無、自分の代わりなんていくらでもいる、という考えの葉澄に潤の言葉は少し刺さる。

凛々子「あっ、そーだ。ねえ、潤ちゃ~ん」
潤「は、はい⁉」

 凛々子に呼ばれ、潤は駆け寄る。

凛々子「これ、良かったら貰ってくれない?」
潤「凛々子プロデュースのネイル! えっ、いいんですか⁉」

 サンプルを貰う潤の姿を遠巻きに見つめる葉澄。
 葉澄にはアレンが声を掛ける。

アレン「葉澄っち!」

 アレンは中年男性を葉澄に紹介した。

アレン「この人、アパレルブランド『NOI-COMYUUN』のデザイナーの桐島さん」
桐島「はじめまして、桐島です」名刺を差し出す。
葉澄「あ……、はじめまして」ぺこっ
桐島「御門くん、誌面で見るよりもカッコいいね。高2って聞いたけど大人っぽい」
桐島「実は、うちのブランドで男性向けのラインを扱うことになってね。アレン君に話したら御門くんが似合いそうなんじゃないかって話になって」
桐島「こんな感じなんだけど」

 スマホで見せられたのはモード系ファッションの服を着せられたマネキンの写真。
 確かに自分に似合いそう、と思う葉澄。

葉澄「……かっこいいですね」
桐島「おっ、好感触! 良かったら何枚か撮らせてくれない?」
葉澄「あ、はい」

 「俺なんかで良ければ……」と言いかけた葉澄だが、先ほど「『御門葉澄』は一人しかいない」と言われた葉澄は……。

葉澄「ぜひ、お願いします」

 珍しく前向きな返事をする。
 桐島は「本当? じゃあ、正式にオファーさせてもらうね~」と去って行った。

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