乙女は今日も夢を見る

『君と同じ高校の制服だったみたいだけど』

救急隊の人が最後にそう言っていたことを思い出す。

その事実を聞いてしばらく学校内をそれとなく探してみたけれど…。

顔も覚えてないし、探しようがないものね。

フッと自嘲的な笑みをこぼし、私はゆっくり目を開けた。

覚えているのは、私を励ましてくれた声だけだし、まずもって声だけで探そうなんて無理な話だよ。

それに、その唯一の手がかりも時が経つごとに薄れてきて…若干曖昧になってきていた。

同い年なのか、先輩なのかすらわからないけど、会えたらちゃんとお礼が言いたい。

あの時は、本当に助かりました、ありがとうございますって。

まぁ、うちの高校は学科もクラスも多いマンモス校だし、出会える確率なんて低いのかもしれないけどね。

うーんと、伸びをした所で私はポケットからスマホを取り出し、時刻を確認する。

16時50分…。

うん、良い時間になってきたな。
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