乙女は今日も夢を見る

「そうでしょ〜?ここね、うちの近所にある老舗の和菓子屋のおまんじゅうなの。私が若い頃からあって…昔はよくおじいさんと食べに行ったのよ〜」

「そうなんですね…!」

観月くんのおばあさんがニコニコと、楽しそうに昔話に花を咲かせる。

私もそんなおばあさんの話に耳を傾けていると。

「高梨さん、ばあちゃん…!おもちが出てきた」

ヒソッと声を潜めて、観月くんがカゴを指差した。

つられて私もそちらの方向を見ると、恐る恐るカゴの中から出てきたおもちが不思議そうに部屋を見回している。

よかった…!ちょっとは慣れてきたのかな


そう思って安堵したのも束の間、バッとおもちの方にかけていったのは、縁側で寝ていたきなこだ。

おもちの様子を伺いつつ、ソロリソロリと距離をつめる。

「おぉ〜。きなこが興味もっとるな」

「そうですね…きなことうまく行けば、あんこは大丈夫と思うんですけどねぇ…」

観月くんのおじいさん、おばあさんも心配そうにその光景を見つめていた。
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