乙女は今日も夢を見る
17時に学校前に来るバスに乗って…帰ろうっと。
そう思い立ち、私は鞄を持つとベンチからゆっくりと立ち上がる。
今日のご飯何かな〜。
なんて、呑気にそんなことを考え、バス停に向かおうと歩き出した時だった。
「…あれ?高梨さんじゃん、こんなところで何やってんの?」
前方から突然、声がかかり、私は思わず目を見張る。
「……」
あまりに急な出来事で、驚きすぎた私は声が出ず、その場にピタリと固まってしまう始末。
ほとんど人なんか来ないはずの裏庭に、なぜか目の前には男子生徒が立っていて…。
しかも、この人…。
よく見たら、クラスメイトの観月くんじゃん…!
そう認識した瞬間、サァっと冷や汗が頬を伝うのを感じた。
観月くんこと、観月彼方(かなた)くんは、私と同じクラスの高校1年生。
サラッとした黒髪に、綺麗な二重の瞳。
鼻筋もスッと通っており、かなり整った顔立ちをしているとクラス問わず、女子から人気がある。
しかも、笑うと若干幼くなる顔が可愛いと2、3年のお姉様方からも人気との噂だ。