乙女は今日も夢を見る

母親にペットボトルのスポーツ飲料を渡され、俺はゴクリとひと口飲む。

冷たい飲料が身体に染み渡るのを感じ、一気に半分ほど飲み干してしまった。

どうやら気づかないうちに、相当のどが乾いていたらしい。

そんな俺を満足そうに見つめた母は、「よし、じゃあお粥食べて、薬飲んで…寝て、早く治しなさい。あ、あと汗かいたでしょ?着替そこに置いてるから着替えちゃってね?」とそれだけ言い残すと俺の部屋を出て行った。

いつものんびりとしている母だが、こういう時は頼りになる。

俺は用意されていたお粥を手に取った。

フタを開けると、湯気が立ち上り美味しそうな匂いが広がる。

あんまりまだ食欲ないんだよな…。

そう思いつつ、スプーンでお粥をすくうと、ひと口頬張った。

「…うまい」

シンプルなお粥だが、出汁が効いていてなんとも食欲をそそられる。

「マジか、全部食えたわ」

食欲がないと言いつつ、結局はすべて平らげてしまった自分に驚いた。
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