乙女は今日も夢を見る
もうそれでいいか…、今さら勘違いです!なんて、言いづらいし。
結局、流れに身を任せることにした私も白猫にゆっくり近づき、手を差し出す。
すると、
「ニャーン」
と、嬉しそうに私にすり寄ってきてゴロゴロと喉を鳴らしてきた。
か、可愛い…!
確か牛乳あったよね!?飲むかな〜?
鞄の中をあさり、持っていた小さい牛乳パックを取り出した私は、上の部分を開けると猫に差し出す。
猫は、トタトタと牛乳パックに近寄り器用にパックから牛乳を飲み始めた。
よほどお腹が空いていたのだろう。
ピチャピチャと、懸命に牛乳を飲む仔猫の姿に私は小さく微笑む。
「ねぇ、高梨さん。この子、名前はなんていうの?」
名前…?
隣にしゃがんでいた観月くんが徐ろにそんなことを問いかけるものだから私はピクッと笑顔が引きつるのを感じた。
だって、この猫ちゃんとは初対面なのだから名前なんてあるはずもない。