乙女は今日も夢を見る

確かに、出てあげればって言ったけどさ。

私たちカップルじゃないのに出たってしょうがないじゃん…。

「腹くくれよ?」と楽しそうな様子の咲人に対して、私は思わずヒクッと口角が引きつるのを感じた――。


*****

―ザワザワ。

嘘でしょ…。思ったよりお客さんいるじゃん…!?

結局、文化祭実行委員の二人に、うまい断り文句も思いつかず、あれよあれよと言う間にたどり着いた野外ステージ。

そこには予想していた以上に観客がいて、すでに私は帰りたい気持ちでいっぱいだった。

私と咲人以外に、バックステージには3組のカップルがスタンバイしており、皆、美男美女揃い。

咲人はいいけど…どうしよう。私じゃ完璧見劣りするじゃん、花鈴どこにいるの…交代して…!

と心の内で嘆く私をよそに、咲人は涼しい顔でステージを見つめている。

「咲人…やっぱり無理だよ。周り皆ガチのカップルなのに…」

「悠理は緊張しすぎ。大丈夫だって。ちょっとしたステージ企画だろうし」
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