乙女は今日も夢を見る
…ハァ。駄目だ、せっかく話しかけてくれたのに上手く返事できなかった…。
小さくため息をこぼしながら自分の席に突っ伏し、そんな後悔の念に苛まれている私の名前は、高梨悠理(ゆり)。高校1年生。
現在、高校に入学して早数ヶ月。
季節は春を過ぎて夏になろうとしていたが…未だに私には友達と呼べるクラスメイトが1人もいない。
いわゆる、“ぼっち”と言うやつである。
一応、クラスの面子のためにも言っておくが、決して私は『いじめ』を受けてるわけではない。
さっきみたいに、用事があれば話はするし、皆から無視されているわけでもない。
だけど…。
「やっぱり、“あの出来事”が痛かったよね…」
再度、大きなため息をこぼし、私は頬杖をついた。
“あの出来事”
そう、私が今に至るまでぼっちを貫き通す羽目になったのは、そもそも入学式当日に起こったある出来事に遡る――。