乙女は今日も夢を見る
「人懐こいな〜」
ゴロゴロと喉を鳴らし、観月くんに甘えるおもち。
観月くん自身もひとしきり、おもちを可愛がるとようやく満足したのか、スクっと立ち上がった。
お、観月くん、帰るのかな…?
と考えた時。
「ねぇ、高梨さん。俺もおもちたまに触りに来ていい?動物好きなんだ」
爽やかに微笑み、私に向かってそんなことを言い放つ。
「う、うん…いいんじゃない…かな?」
そもそも私に決める権利なんかない。
私だって、今日初めておもちに会ったんだもん。それに…おもちが後日いるなんて保証もないのだ。
「よっしゃ。ありがとう。俺、友達またせてるからそろそろ行くよ。じゃあ、また明日学校で!」
ヒラッと私に手を振り、嬉しそうに校内の方に戻っていく観月くんの後ろ姿を見つめ、私は小さくため息をこぼす。
やっぱり、観月くんに本当のこと言えばよかったと、今更ながら後悔した。
すると。
ニャー。
小さく鳴いて、私の足にすり寄ってくるおもち。
「…ねぇ、おもちちゃん。あなたは明日もここに来る?一応、しばらく通ってくれとありがたいな…缶詰でどう?」
猫に向かって、そんな打診をするあたり私も相当切羽詰まっているようだ。
私は今度は盛大にため息をつくと、おもちの頭を軽く撫でたのだった。