乙女は今日も夢を見る

さっき廊下で女子とって…。

『…ッ!』

もしかして、如月との会話のことか?

大谷くんの言葉で、サーッと血の気が引くのを感じた。

『空き教室ってここ?』

『あ、うん…』
 
ガラッ。

放心状態の俺をよそに、大谷くんは教室内に入ると高梨さんの荷物を手に取る。

そして。

『あのさ、観月の事情はよく知らないけど……悠理のこと好きなんよな?じゃあ、アイツを傷つけんなよ。言っとくけど…俺は悠理にきちんと伝えたから』

『……ッ』

チラッと俺を見据えて、それだけ言い残すと何も言い返せない俺を残し、彼は空き教室を後にしたのだった――。


*****

「結局、大谷くんの言う事、正論すぎて何も言い返せなかったし…俺、マジでダサすぎ」
 
ハハッと乾いた笑みがこぼれる。

"俺は悠理にきちんと伝えたから"

そう言った大谷くんの真剣な表情を思い出し、小さくため息ついた。

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