乙女は今日も夢を見る

『お姉ちゃん…大丈夫…?』

『大丈夫だよ。よかった…ケガはないみたいだね』

痛みを堪えつつ、側で泣き出しそうな男の子の安否を心配する彼女に胸が締め付けられる。

自分の方がヒドいケガをしているくせに…、他人の心配してる場合じゃないだろう…。

気づけば、俺はスマホを取り出し急いで救急車に通報し、痛みからか意識が朦朧としている彼女に向かって『大丈夫?今、救急車呼んだからもう少し頑張って』そう声をかけていたんだ――。

正直ずっと気にしていた、あの時の女の子はどうなったのかなって…。

だからこそ、5月になって、彼女が同じクラスにいた時はそりゃビックリしたものだ。

スマホを取り出すと、そろそろ約束の時間から30分が経過しようとして、俺は小さく肩を落とす。

さすがにそろそろ教室…戻らないとな。

そう思って、ベンチから立ち上がろうとした時。

「…ニャー」

は?おもちの鳴き声…?

聞き覚えのある猫の鳴き声に俺はソッと顔をあげる。
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