乙女は今日も夢を見る
小さく俯く彼に私は「そんなことない」と首を横に振る。
「そんな経験があったら誰だって簡単には切り替えられないよ。でもね、1つだけ。私はあの時、観月くんが励ましてくれて本当に安心した。ケガも痛かったし、顔はしっかり見れなかったけど…私のために一生懸命声をかけてくれたのは覚えてた…。だから、本当にありがとう。私を助けてくれた人に、こうやってずっとお礼が言いたかったの」
ようやく伝えられた感謝の気持ちに私も胸がいっぱいになる。
そんな私に対して観月くんは、心底嬉しそうに優しく微笑んだ。
ドキン。
「…っ」
その笑顔に不覚にもトキメいてしまう。
今さらだけど…観月くんが助けてくれた男の子だと知って意識している自分がいた。
あの時の優しい声が、自然と観月くんと重なり緊張してしまう。
というか、何で今まで気づかなかったんだろう…。
自分の鈍感さを悔いていると。
「あのさ、高梨さん…」
観月くんが言いにくそうに口ごもりつつ、声をかけてきた。
「な、なに?」
「…大谷くんに告白されたって…本当?」
「え?」