乙女は今日も夢を見る
咲人が目配せをしたため、その方向に顔を向けた瞬間、私は目を見開いた。
だって、そこにいたのはまさかの観月くんだったから…。
「それじゃ、俺はこれで帰るから」
未だに状況が呑み込めていない私をおいて、席を立った咲人はすれ違いざま、観月くんに何か耳打ちする。
そして、「またな」と笑顔でその場を立ち去って行ったのだった――。
「…えっと、ゴメン。俺も状況がよくわかってないんだけど…なんか高梨さんから話があるからって大谷くんから連絡きて…」
ポカンとしている私に、観月くんは遠慮がちに声をかけると、さっきまで咲人が座っていた席に腰をおろす。
「そ、そうなんだ…。というか、2人っていつの間に連絡先交換してたの?」
「文化祭の時に、ちょっとね」
全然しらなかった…。咲人も教えてくれればいいのに。
なんだか、仲間はずれにされてるみたいで少し寂しい気持ちに襲われる。
「…それで、高梨さん話って…?」
ドキン。