乙女は今日も夢を見る

「だから、ありがとう」

もう一度お礼を言う私を今度はジッと真剣な表情で観月くんは見つめる。

すると。

「…んなことない」

「え?」

「俺、別に誰にでも気遣いしてるわけじゃないよ。今回は高梨さんだったから俺も学級委員やろうかなって思っただけだし…」

なんて、そんなことを言い出すものだから私は目を大きく見開いた。


傍から見れば、良い雰囲気に見えるかもしれない。

しかし、観月くんの場合はそういう感じで言ってるわけじゃない。

恐らく優しいから、ぼっちの私を気遣っての言葉なのだろうけれど…。

あまりにストレートな物言いに私は返答に困ってしまう。

「……え、と。そう言ってくれて嬉しいよ。私も観月くんと仲良くできたらいいなって思うし…できたら…と、友達になれればなって思ってたから」

ゆっくりと、言葉を選びながらようやく口を開いた私に対して。

「…え、友達?」

と、確認するように繰り返す観月くん。

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