乙女は今日も夢を見る

『大丈夫?今、救急車呼んだからもう少し頑張って』

誰かが駆け寄ってそう声をかけてくれる。

声質的には、若い男性の声。

涙で視界が歪み、顔ははっきりとは見えなかったが、痛みで朦朧とする意識の中、励ましてくれるその人の存在がありがたかった。

ピーポーピーポー…。

数分後、遠くで聞こえてきた救急車のサイレンに安堵した私。

『あ、りがとうございます』

誰か分からないが、私に声をかけ続けてくれた人物にお礼を言うと、そのまま意識を手放してしまったのだった――。



そして、次に私が目を覚ましたのは、病院のベッドの上。

一瞬、状況が飲み込めなくて混乱したが、

『悠理!!起きたのね…!あんたはもう親に心配かけて…事故にあうなんて心臓が止まるかと思ったのよ』

と、ベッドサイドに座っていた母が涙声で声をかけてくれた瞬間、徐々に記憶が思い起こされる。
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