乙女は今日も夢を見る

本人は自分が注目されていることにおそらく気づいているだろう。

なのに、そんなことはどこ吹く風で、無視を決め込んでいる。

全く…ああいう所が、話しかけづらい雰囲気に繋がってるんだよなぁ。

チラチラと話しかけようか迷っている女子達が遠巻きに咲人を見ているのがわかった。

しょうがない。私が助けてあげますか…。

「咲人、お待たせー」

そう思った私は、スマホを触る咲人に声をかける。

すると。

「悠理…!久しぶり!」

私の声かけに顔をあげた咲人は、パアッと表情を明るくし柔らかく微笑んだ。

…うっ。相変わらず、心を開いた相手に対しての笑顔の破壊力ハンパないわ。

そんな咲人のキラキラ笑顔を見た周りの女子達がキャッキャッと騒いでいるのが伝わってきて、思わず苦笑いを浮かべる。

普段から、皆にこの笑顔で接すればもっととっつきやすいのにと中学時代は思っていたが…。

『…俺が笑うとさ、結構勘違いされて…あとが大変なんだよ』
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