乙女は今日も夢を見る

「裏庭の方は日陰になってるから、今日みたいな天気だとわりと涼しいはずだよ」

「確かにこっちの方は木陰が多くて気持ちいいな」

咲人がそう呟いた瞬間、サァッと涼しい風が吹いた。

校舎が日を遮ってくれるおかげで、裏庭の方はかなり居心地がいい。

いつの間にか咲人も普段の表情に戻っていた。

よかった…さっきはどうしたのかと思ったけどいつも通りの咲人だ。

2人で並んで歩いていると、中学時代を思い出して懐かしくなる。

そんなことを考えていた時。

ニャァ〜

「…!!」

植え込みの陰からサッと飛び出してきたのは白くてフワフワの物体。

「おもち…!今日はお出迎えしてくれたの」

「ニャ、ニャア〜」

私の足元に甘えてすり寄ってきたのは、おもちだ。

ちょくちょく餌をあげるようになったからか、おもちは時々こうして私を迎えに来てくれることがあった。

「へぇ。この子が…本当に真っ白なんだな」

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