悲劇のヒロインぶるなと言われましたので
「――――カンナの知り合い?」
その時、隣からそんな風に問い掛けられた。
見事なまでの銀色の髪に翠の瞳、この世のものとは思えないほどの美しく整ったご尊顔をお持ちの男性で、名前をユージーンという。彼は我が国の王太子であり、私の婚約者だ。
ユージーンはさり気なく、私を庇い、首を傾げる。
「いいえ、殿下。全く存じ上げない方ですわ」
ゆっくりと歌うように答えれば、ユージーンは穏やかに目を細める。
「では行こうか」
相手にするだけの価値はない――――言外にそう伝え、ユージーンは私をエスコートする。
「ちょっ……ちょっと、待って! ……待ちなさいよ! 栞奈、あたしのこと、覚えてるんでしょう? シカトするなんて良い度胸してるじゃない! あんたのせいで、あたしの人生めちゃくちゃになったのに――――」
叫ぶ彼女の目の前に、数人の男性が立ちはだかった。ユージーンの護衛だ。
「何よ、こいつら! 邪魔しないで!」
呆れた。わざわざ『殿下』って呼んで牽制したのに、全然気づいていないんだもの。
大体、血の気が多すぎるのよね。前世の記憶があるのにTPOも弁えられないなんて、真面目に問題なのでは?
その時、隣からそんな風に問い掛けられた。
見事なまでの銀色の髪に翠の瞳、この世のものとは思えないほどの美しく整ったご尊顔をお持ちの男性で、名前をユージーンという。彼は我が国の王太子であり、私の婚約者だ。
ユージーンはさり気なく、私を庇い、首を傾げる。
「いいえ、殿下。全く存じ上げない方ですわ」
ゆっくりと歌うように答えれば、ユージーンは穏やかに目を細める。
「では行こうか」
相手にするだけの価値はない――――言外にそう伝え、ユージーンは私をエスコートする。
「ちょっ……ちょっと、待って! ……待ちなさいよ! 栞奈、あたしのこと、覚えてるんでしょう? シカトするなんて良い度胸してるじゃない! あんたのせいで、あたしの人生めちゃくちゃになったのに――――」
叫ぶ彼女の目の前に、数人の男性が立ちはだかった。ユージーンの護衛だ。
「何よ、こいつら! 邪魔しないで!」
呆れた。わざわざ『殿下』って呼んで牽制したのに、全然気づいていないんだもの。
大体、血の気が多すぎるのよね。前世の記憶があるのにTPOも弁えられないなんて、真面目に問題なのでは?