捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
17話 竜王様からの依頼
夏が過ぎて朝晩が寒くなってきたころ、店の前に一台の馬車が止まった。侍従が手を差し伸べるまもなく馬車からひとりの男性が降りて店に飛び込んできた。
カランカランカランとけたたましくベルが鳴り響く。
「いらっしゃいませ」
アレスは昼食の準備でつい先ほど二階に上がったばかりだ。お客様に視線を向けると、目の覚めるような美しい男性が佇んでいた。
透き通るような水色の髪に紫紺の瞳がキラキラと輝いている。シンプルだけど仕立てのよい服を身にまとっているから、羽振りのいい商人か高官だろうか。
ジッと私の方を見ているので説明を聞きたいのかもしれない。接客をするためにカウンターから出て、お客様の前に立った。
そこで少し遅れて入ってきたのは森で助けた男性だった。侍従のように側に控えたところを見ると、あの時アレスが言っていた主人がこの綺麗な男性かと理解する。
「本日は商品のご購入ですか? それとも魔道具のオーダーでしょうか?」
「〜〜〜〜っ! 君がロザリアちゃん!? 会いたかったー!!」
そう言って私に飛びついて、ぎゅうぎゅうと抱きしめられた。